最近のエッセイと言えば、自分の意見を強く主張したり、社会の不条理に対し読者の行動を求めるようなものが多いが、本書は、ある分野の著名人が個人的な価値観に基づいて社会を批評する、いかにも昭和のエッセイ集である。
日頃、女子学生と接する文学部の教授であるためか、専業主婦の育児だとか趣味だとか、女の生き方をテーマにしたものが多い。
エッセイとしてはうまく、中学校の教科書にでも載せたくなるような文章であるが、肝心の中身が現代の感覚とはズレていると思う。
4 ほんとうの愛について
『電車の中で、母親のスカートを摑んでいた子供が叱られた。
子供は母親から離れ、電車の中を走り回った。
著者の靴が踏まれた。
子供は席に座り、景色を見た。
子供の靴が母親のスカートに触れ、また叱られた。
子供の靴は隣の老人のスボンにも触れ、老人は母親を注意した。
母親は、老人にヒステリーを起こした。
著者は、この母親は視野が狭い、子どもも同じようになると思った。』
著者は、日本の文化や教育について考えている。
考えているのだけれども、何か視点が抜け落ちていると思う。
上の文では、この母親はたしかに悪い。
悪いけど、非難して終わりか?
なぜ、著者は老人に加勢してやらなかったのだろう。
自分はこうしたエッセイを書いて憂さ晴らしできるから、それでいいのか?
むしろ、著者は、靴を踏まれても何も言えなかった自分を俎上に載せるべきではなかったのか?
それこそが日本人の特徴として論じられるべきではないか。
自分の身を切らずに、上から目線で社会を論ずる姿勢は、いかにも昭和だなあと思う。
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登録情報
- ASIN : B000J83ZB4
- 出版社 : 講談社 (1980/10/1)
- 発売日 : 1980/10/1
- 言語 : 英語
- 新書 : 205ページ
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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上位レビュー、対象国: 日本
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2011年1月4日に日本でレビュー済み
1980年、物質的には十二分に豊かになった日本。しかし、本当の幸福を人々は手に入れたのであろうか。
そんな問いかけをオムニバス形式で投げかける1冊。
「今後、東京にはマンションがますます増えていくであろう。」
うーむ。
著者の実践の中には参考になるものもあった。
そんな問いかけをオムニバス形式で投げかける1冊。
「今後、東京にはマンションがますます増えていくであろう。」
うーむ。
著者の実践の中には参考になるものもあった。
2005年4月2日に日本でレビュー済み
今から四半世紀も前に書かれた『幸福論』です。幸福という言葉に代表されるような生きていく上での常識とも言うべき事柄について、書かれています。21世紀の今となってしまうと、多少古めかしく感じるところもないわけではありませんが、かなりの部分現在にも通じるものがあると思います。
よくある人生論のような、一個人の経験を一般に汎化させてしまうようなものでなく、きっと多くの人の共感を呼ぶであろう、そういった意味では極めて常識的なことが書かれていると思います。
加賀乙彦といえば有名な作家であり、精神科医の経歴ももち、大学教授も勤めた人で、そうした経歴が個人の体験だけでなく一般に通じるように語るというスタンスをとらせているように思います。
それにしても、この頃はこのような常識がきちんと語られることがなくなってしまったように思います。常識そのものが疑われてしまう世の中になってしまったのかもしれませんが、いつの時代にも通じる、本当に人が生きていくために必要なものは消えるわけではないと思います。だからこそ、21世紀になった現在こそこうした幸福論がもっと読まれても良いのではないかと思います。
よくある人生論のような、一個人の経験を一般に汎化させてしまうようなものでなく、きっと多くの人の共感を呼ぶであろう、そういった意味では極めて常識的なことが書かれていると思います。
加賀乙彦といえば有名な作家であり、精神科医の経歴ももち、大学教授も勤めた人で、そうした経歴が個人の体験だけでなく一般に通じるように語るというスタンスをとらせているように思います。
それにしても、この頃はこのような常識がきちんと語られることがなくなってしまったように思います。常識そのものが疑われてしまう世の中になってしまったのかもしれませんが、いつの時代にも通じる、本当に人が生きていくために必要なものは消えるわけではないと思います。だからこそ、21世紀になった現在こそこうした幸福論がもっと読まれても良いのではないかと思います。